服薬に意外と大事? プラシーボ効果について

服薬に意外と大事? プラシーボ効果について

薬剤師として仕事をしているみなさんなら日頃から感じていることだと思いますが、お薬というのは本当に奥の深いものですよね。今回は、お薬と合わせて知っておきたい『プラシーボ効果』と呼ばれる効果についてお話していきたいと思います。

プラシーボ効果って一体なに?

みなさんの中には、プラシーボ効果という名前を耳にしたことのある人もいるのではないでしょうか? プラシーボ効果は、プラセボ効果と呼ばれることもあります。これは、一体何かというと、薬効成分を含まないものを薬だと言って投与すると、本物の薬だと信じ込んだ患者さんの病状が良くなっていくといった治療効果のことを言います。

例えば、ただの水を「すごくおいしいお酒だよ!」と手渡され飲んでいると実際に酔いが回ってくるといったこともプラシーボ効果によるものだと言われています。ようは、思い込みの力ということですね。

ただの『思い込み』と思って侮るなかれ。人間の思い込みというのは、時にすごい力を発揮するものなのですよ。そんなプラシーボ効果の秘めたる力についてお話していきます。

プラシーボ効果にはいろんな形がある!

プラシーボ効果というのは、先ほども言ったように、本物の薬だと偽って患者さんに服薬してもらうと、実際に効果のある薬だと思い込んだ患者さんの病状が良好に向かっていく治療効果のことを言います。

プラシーボ効果というのは、偽薬の他にもさまざまな形で得ることができます。例えば、医師から『絶対に治ります』という言葉をもらうと不思議と病状が良くなったり、偽の手術や儀式によって病状が回復に向かったりするのも一種のプラシーボ効果と言えます。

昔の人たちなんかは病を悪魔の仕業だとして、儀式を行うことでその症状を治めていったなんて話もあります。これは、当時の人たちが本当に神様や神秘の力というものを信じていたからでしょう。

この他にも、医師が着ている白衣や聴診器をによって、プラシーボ効果を得られるなんてこともあるようです。

プラシーボ効果で癌が消えた話もある!

実際にプラシーボ効果は、どれくらい治療に効果があるのかご存知でしょうか? 例えば、全身にがんが転移してしまった患者さんの話があります。その患者さんにがんに効果がある新薬を投与したところ、2週間も経たないうちにみるみるがんが消えていったのです。ところが後日、その新薬には効果がないということがメディアによって報道されると、それを知った患者さんの体内に再びがんが現れてしまい、程なくして亡くなったという話もあります。

プラシーボ効果もここまでくると眉唾ものになってしまいますが、プラシーボ効果は鎮痛剤や抗精神薬にはその効果が顕著に現れるとか。

そういえば、みなさんは、紙で指を切ったことがありますか? 私は、小学生の頃に何度かそういった経験があります。でもその瞬間は、紙で指を切ったという実感がありません。しばらくしてふと指から血が出ていたり、何かに触れて指に痛みを感じたりした時、それまで何ともなかった指が急に痛みを覚えるようになります。

これも言ってしまえば、一種のプラシーボ効果ではないでしょうか。『指を紙で切った』という認識を脳がしていないために痛みを感じなかったのです。それはつまり、指を切っていないと脳が思い込んでいるということでもありますよね。

ですからプラシーボ効果もあながちデタラメというわけではないのかもしれません。

実は生化学的にも実証されている?

ちなみに『痛み』に関しては、生化学的にも実証されています。電気刺激によるプラシーボ効果の実験が行われました。

被験者の腕に電気刺激による痛みを与えたあと、痛み止めとしてプラシーボの塗り薬を塗り、再度電気刺激を与えます。すると、不思議なことに痛みが和らいだと言うのです。実際にfMRI呼ばれる機器で脳や脊椎を調べてみたところ、延髄にある痛みを止めるシステムが作動していることがわかったのです。

反対に同じ被験者に対して、何も知らせずにナロキソンという化合物を投与したところ、痛みがぶり返してきたのです。ナロキソンというお薬は、モルヒネの受容体に結合することによって、モルヒネによる作用をブロックする働きがあります。

この実験からわかったことは、プラシーボ効果による鎮痛作用がモルヒネと同じ経路に寄っているということです。つまりプラシーボ効果は、決して『気のせい』というわけではないと言えるのです。

治療以外にもいろんな面で効果を発揮!

プラシーボ効果は、偽薬効果なんて言われていますが、実際には治療以外にもさまざまな面で効果を発揮すると言われています。例えば、仕事や恋愛など、それこそ多岐に渡ります。

例えばわかりやすいものでいえば、自己啓発本などが挙げられます。自分を高めたいと思っている人が自己啓発本を読んで、その内容に書かれてあることを1つ1つ実践していくと、少しずつ何らかの変化が出てきます。

その変化が自分の自信に繋がり、もっと自分を高めていこうという気持ちになっていくわけですね。次第に『もしかしたら上手くいくかも!?』と精神的にポジティブになっていきます。『必ず成功する』という気持ちが実際に成功を手繰り寄せることもあるのです。

反対に言えば、『失敗する、失敗する』とネガティブな方にばかり考えてしまうと、本当に何もかも上手くいかないなんてことはよくありますよね。自己啓発本や恋愛術について書かれた書籍、もしくは小説などがプラシーボ(偽薬効果)となり、気持ちを前向きに変えていくことができるのです。

患者さんとのコミュニケーションとしてもこういった話を覚えておくと良いかもしれませんね。

ただ思い込みも行き過ぎると、マインドコントロールとか洗脳といったことに近い状態になってしまうのが怖いところです。上手い話に乗せられやすい人や信じやすい人は、注意が必要かもしれません。

ノセボ効果のリスクも覚えておこう!

プラシーボ効果について考える時は、ノセボ効果についても考えておかなくてはなりません。ノセボ効果というのは、思い込みによって薬の効果だけでなく副作用まであるのではと思い込んでしまうことで、さまざまな副作用が実際に起きてしまう効果のことです。

プラシーボ効果やノセボ効果のことを考えていると、人間の脳というのは本当に不思議なものですよね。ちょっとした思い込みによって、良くも悪くもなるわけですから。もちろん人によっては、必ずしもはっきり現れるというわけではないでしょう。

痛いの痛いの飛んでいけ

プラシーボ効果は、思い込みによってさまざまな治療効果を得ることができると言われていますが、決して万能薬になり得るわけではありません。やはり人間の思い込みの部分になりますから不安定ですし、限界もあるでしょう。また変な薬を飲まないようにも気をつけなければなりません。そのための薬剤師という存在です。もちろん普通の病院で処方された薬であれば、そういったことはないと思います。

何より現代では、プラシーボ効果に頼らずとも確かな薬効を持つお薬がどんどん開発されています。ただそういったお薬に加えて、プラシーボ効果も付加価値としてあれば、より治療面で良い期待を持つことができるかもしれません。

今思えば、私たちは小さい頃から『痛いの痛いの飛んでいけ』という一種のおまじないに助けられてきたこともありましたよね。あれもきっとプラシーボ効果だと言えるでしょう。


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