虫歯の治療薬ができるかも!? それって一体どんなもの?

虫歯の治療薬ができるかも!? それって一体どんなもの?

今回お話するのは、『虫歯の治療薬ができるかも!?』ということです。みなさんは、『ドラッグ・リポジショニング』という言葉をご存知でしょうか。このドラッグ・リポジショニングは、いわば医薬の転職先を探すということです。ある分野で使われていた医薬を別のことに用いてみよう! ということですね。現在、このドラッグ・リポジショニングは、さまざまな分野で活用されています。中には、まさか! な場で活躍の場を見出すこともあるとか。そんな中、変わったケースがここ最近で報告されたので紹介していきます。

虫歯の治療

みなさんの中には、虫歯の治療経験がある方も多いのではないでしょうか。虫歯の治療は、基本的に歯科医師が行います。この歯科医師や歯学部といった独立した学部・資格がある歯科ですが、そこから歯科治療は医学の中でも特異な位置に存在していることがわかりますね。

やっぱり、『歯』というのは、身体の中でも硬い組織が唯一表面に出ている部分。治療法も他のものと異なり、独特な方法が取られることがほとんどです。とはいっても、医薬が虫歯治療や予防に用いられることもあります。

例えば、フッ素材は、歯の表面にあるエナメル質を酸に侵されにくくしてくれますね。他にも虫歯の原因菌を殺菌して治療のサポートをする医薬も存在します。ただこれらの医薬は、進行が進んでしまった虫歯を根本的に治療してくれるわけではありません。あくまで、虫歯治療は、悪い部分を削って、そこに詰め物をするというのが基本的な方法になります。

画期的な虫歯治療薬

そんな中、一度侵食されてしまった歯を再生させてくれる画期的な治療薬があるかもしれない……という可能性が出てきたのです。どんな治療薬なのでしょうか。何と元は、アルツハイマー症の治療薬として試験中だった『チデグルシブ』という化合物なのだとか。

チデグルシブは、体内でグリコーゲン合成を制御する作用を持つ『GSK-3』というタンパク質の働きを阻害する物質だと言われています。ただこれだけでは、なぜチデグルシブが虫歯治療に効果的なのかよくわかりませんね。

GSK-3は、特定のタンパク質に対し、リン酸を取り付ける役割を持っています。リン酸は、とても小さな原子団ですが、巨大なタンパク質に取り付けられるとその働きと構造を変えてしまいます。つまりリン酸がグリコーゲンの合成酵素に取り付けられてしまうと、その酵素は、グリコーゲンの生成をやめてしまうということですね。

この他にもDSK-3がリン酸を取り付けるものがあります。それは、脳内にある『タウタンパク質』です。リン酸がたくさん取り付けられたタウタンパク質は、脳の機能を破壊してしまいます。そして発症するのが、アルツハイマーだと言われています。

そこで考えられたのが、「余計なリン酸化を引き起こすGSK-3の働きを薬によって阻止できれば、アルツハイマー症の進行を抑えられるのでは?」ということでした。先ほどのチデグルシブは、この効果を見込んで作り出された化合物なのです。今では、人間を使った臨床試験が進められています。

GSK-3の持つ作用

これまでの話を聞いているとGSK-3には、良くない作用ばかりですね。しかしGSK-3が持つ作用は、これだけに留まりません。他にも幹細胞の能力を維持することにも関係を持っています。チデグルシブは、この働きも阻害しますから、普段他細胞に化けない幹細胞が持つ眠った力を引き出してくれます。つまり分化を促進する力があるというわけです。

まず小さなスポンジにチデグルシブを含ませます。そして虫歯の穴にそのスポンジを詰めます。するとまわりにある幹細胞を分化増殖させるのです。結果、歯の象牙質を再生させることが判明しました。このスポンジは、コラーゲンでつくられているので、少しずつ分解されてなくなり、最終的には、象牙質に置き換わっていくのです。

現在では、詰め元としてセメントなどが用いられることが多いですね。これらの詰め物は、歯の強度を下げてしまいます。それだけでなく数年後には、取り替えなければなりません。一方、自分の細胞を再生させて穴を修復していく今回の治療方法は、従来のものよりもずっと良いことがわかりますね。

実用化はまだ先の話……

今回お話した『チデグルシブ』という化合物の話。実用化されれば、歯科治療の行う上で活躍すること間違いないでしょう。しかし現在のところ、マウスによる動物実験が行われている段階。ですから私たち人間に用いられるようになるのは、もう少し先の話になりそうです。

チデグルシブは、さまざまなところに作用しますので、予想しないところに副作用が起こることも考えられます。しっかりと実験を重ねた上で、実用化が進んでいけば良いですね。


▲TOPへ